MRI用磁性体検知器「MAGGUARD」開発ストーリー

MRI用磁性体検知器「MAGGUARD」開発ストーリー

医療の進化・高度化が進む中で、MRI(磁気共鳴画像診断装置)の導入は増え、日本国内でも約6,500台(2014年時)が稼働しているといわれています。導入数の増加と共に、MRI検査室内での磁性体吸着事故や熱傷事故も増えてきています。日本画像医療システム工業会(JIRA)の推計では、2011年にはメーカー対応の事故だけでも、約200件の吸着事故が起こっています。このような事故防止のため、検査室へ入る際に磁性体のスクリーニングが重要となってきます。

フジデノロは、長年研究開発してきた微少な磁界変化を検知できる高感度MI(磁気インピーダンス)センサを搭載した、MRI用磁性体検知器「MAGGUARD(マグガード)」を開発し、グローバル市場での販売を開始しました。

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MRI用磁性体検知器
「MAGGUARD」

がんの粒子線治療用の「ボーラス」製作から始まった、ヘルスケア分野への挑戦

プレス成形、接着・溶接等の一般加工から、旋盤加工、マシニング加工等の機械加工までを手がけ、事業分野が拡大してきたフジデノロが、ヘルスケア分野へ進出したのは、2008年のこと。がんの粒子線治療において使用される樹脂製の「ボーラス」の製作からヘルスケア分野参入の歴史はスタートしました。ボーラスは高密度ポリエチレン製で、照射範囲の奥行きを調節するために用いられるもので、医療機関より送られる形状データを元に、1つずつ患者さまに合わせて加工製作されるものです。

この「ボーラス」製作が、後々フジデノロのヘルスケア事業の布石となるのです。「ドクターや放射線技師の先生方とのお付き合いの中で、医療現場の課題など生の声を聞くことができました。そこでMRIの吸着事故の話も聞き、当社のMIセンサが活用できるのではないかと思いました」と語るのは、ヘルスケア事業部の小泉 浩之。早速、MIセンサを開発している技術開発部と共に、新たな独自製品となる磁性体検知器の開発が進められました。

小泉は、現在「MAGGUARD」の営業担当として全国の医療施設に、MRIの吸着事故防止の啓発をしたり、販売代理店の開拓を進めています。

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「MIセンサ」の持つ無限大の可能性を、ヘルスケア分野に活かす

フジデノロの技術開発部では、大学と共同で生体磁気計測の研究開発が進められていました。従来の体表に接触した電極から計測するのではなく、体の機能的電気活動に伴う活動電流により発生する微小磁界を検出できる、MIセンサの開発です。これは、アモルファスワイヤの磁気インピーダンス(MI)効果を応用した超高感度磁気センサで、携帯電話やスマートフォンの電子コンパスなどでも利用されているものです。

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「もともと大学の細胞生理学の評価をするために、pT(ピコテスラ)レベルのMIセンサ開発を進めていました」と、技術開発部の田口 喜崇(たぐち よしたか)が語るように、生体磁気診断の普及に貢献するシールドレス超高感度センサ開発を進めていたのです。従来の超電導量子干渉デバイス(SQUID)を応用した大規模な設備を、小型化、低コスト化できるものとして期待されているものですが、実際の脳磁・心磁測定に応用するには、まだ測定精度や信頼性・安定性向上が必要でした。そこでほかにもMIセンサ活用の道を探していたところに、MRIの吸着事故の話が舞い込み、MRI用磁性体検知器の開発が2012年にスタートすることになりました。

「フジデノロにとって、デバイス開発は新しい分野になります。しかし、樹脂加工で培った高精度加工技術を持ちながら、社内で部品製作から完成品評価までできる設備環境は、ほかの医療機器メーカーにはない強みです」(田口)というように、新規参入をデメリットとして考えずに、逆に従来の慣習にとらわれない自由な発想とチャレンジ精神で、開発を加速させていったのです。

「吸着事故をなくしたい」という強い想いが、製品化の推進力となった

MRIの吸着事故は、MRIが医療施設に導入されるときから懸念はされていました。しかし、従来は問診や簡易な金属探知器で予防するといったような対策が取られてきましたが、ヒューマンエラーを完全に防ぐことができないケースもありました。近年MRIの高性能化に伴い、より強力な磁場が発生し、磁性金属がMRI検査室に持ち込まれて、それらの金属が装置に向かって勢いよく飛んでいき、患者さまや医療従事者を直撃したりする重大な事故も起きています。MR装置は検査中でなくても常に大きな磁場が発生しており、検査室内への磁性体の持込は厳格にふせがなければなりません。

社内では医療分野に参入して日も浅く、磁性体の吸着事故防止の補助装置というもの、その市場性がなかなか理解されませんでした。そのため、開発メンバーは社内に対しても、吸着事故防止の重要性や意義を説いて回る日々が続きました。

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また、新市場での新規製品ということで、磁性体検知器の機能などの仕様も手探りとなり、製品化までの道のりは困難を極めました。しかし、MRIの吸着事故を未然に防ぎたいという強い思いが、開発にかかわる社員の原動力となり、開発から2年後に製品化、上市されることとなりました。

 「当社のMIセンサが、磁性体検知器というカタチで世に出て、社会の役に立つ製品として結実したことは、最高の喜びです」(小泉)、「製品化で必要なMIセンサ以外の開発、データ処理システム、ソフトウェア開発など技術的に新しい挑戦は数多くありました。しかし、開発メンバーの協力のもと試作機が完成したときには感きわまるものがありました」(田口)というように、苦難を乗り越えて製品化された「MAGGUARD」は、フジデノロのグローバル戦略の第一歩ともなっていきます。

グローバル市場で、ヘルスケアメーカー「フジデノロ」の名を浸透させたい

センサデバイスは、2020年に世界で4.5兆円に到達するといわれ、中でも生体センサは大きな伸びが期待されています。フジデノロは、MIセンサを搭載した「MAGGUARD」を足掛かりとして、グローバル市場に打ってでます。単純に製品を売るだけではなく、それぞれの国・地域のお客さまからの声を誠実に聞いて、さらなる改良をしていく予定です。

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「人の命にかかわる製品だけに、常にカスタマイズ、バージョンアップは不可欠と考えています」(田口)。そして、MIセンサよりも、より微弱な磁場変化もとらえることが可能なセンサ開発にも着手し、第2、第3のデバイスも視野に入れて日夜研究開発をしています。

また2020年には、世界の人口は80億人に達しているでしょう。その80億人の健康を守るために、グローバル・ヘルスケアメーカーとしてさまざまな製品を送りだすことが、フジデノロの使命です。そのためにヘルスケア事業部、いやフジデノロ全社をあげて、挑戦を続けていきます。

※富士キメラ総研「2012センサデバイス/ソリューションビジネス市場調査」より


<取材協力>
koizumi prof

ヘルスケア事業部 

小泉 浩之(Hiroyuki Koizumi)

taguchi prof

技術開発部 課長代理

田口 喜崇(Yoshitaka Taguchi)

※MRI磁性体検知器「MAGGUARD」に関する詳細は、こちらをご覧ください。


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